デイサービスの送迎業務は基本業務の中でもとても重要な業務の1つです。
他の記事でも申し上げていますが、ご利用者様と最初に相対するのが送迎担当者ですし、全てのサービスの始まりに当たりますので他の業務に多大な影響をあたえるからです。
そんな送迎担当者には下記のような能力が必要だと言われています。
- 時間通りにご利用者様をお迎えに行き、送り届ける時間管理能力
- ご自宅から安全に車に載せ、デイサービスに連れてくる移動介助の知識
- 事故のない運転技術
- 密室に少人数で対応するためのコミュニケーション能力
これだけの能力が必要な送迎業務ですので私は極力社員や経験の長い職員に送迎を任せるようにしています。
たまに、介護未経験でも可と言うような送迎担当者の求人を見かけますが、私は良いことだとは思っていません。
目次
送迎担当者に最も必要な能力
さて、今回のテーマにも直結する話なのですが、私が考える送迎担当者の最も重要な能力は、『お休みする必要のないご利用者様がドタキャンしようとしたときにうまくデイサービスに連れてくる力』です。私はこの力のことをドタキャン返しとよんでいます。
これまでの記事でも申し上げて来ましたが、デイサービスではご利用者様がお休みされてしまうとその分の介護給付費をいただくことができません。
ご利用者様のお休みはデイサービスの売上の減少に直結する大きな原因になり、多い日には全ご利用者様の2割以上がお休みされてることがあります。
事前にお休みがわかっていれば他のご利用者様に声をかけることも出来ますが、送迎担当者が迎えに行った際のドタキャンは補填することができず、売上の減少に直結してしまうのです。
ですから、ドタキャン返しはそのまま売上を引き上げるとても大切な送迎担当者の業務ということになるのです。
お休みされる理由は下記にまとめますが、様々です。その中で減らせるお休みを見極めお連れすることができるのが有能な送迎担当者だと思っています。
高齢者がドタキャンする理由
ドタキャン返しの方法を学ぶ前にまずは高齢者がドタキャンする理由について考えてみます。
ドタキャンの理由を学び、連れて来れる可能性のある場合を見極める事がドタキャン返しの第一歩です。
急に外出したくなくなる
ご利用者様は高齢であり、介護が必要な身体状態であるためご自宅から出たがらない方がほとんどです。
デイサービスの本来の存在意義の1つに引きこもり防止のため、外出の機会を作ることが上げられていることからもわかるように、高齢者は自宅にいることを好みます。
そういった方はデイサービスでの機能訓練や入浴、食事をそれほど必要としてないかもしれません。全て自分でできると思いこんでいたり実際やっている場合にこういうドタキャンをされる方が多いかもしれません。
忘れてしまっている
認知症を患っているご利用者様に多いのが、ご利用日を忘れてしまっている場合やデイサービスに通っていることさえも忘れてしまっているケースです。
特に独居の方は準備が整っていなかったり、ご自宅にいないケースもあります。
こういった場合はご自宅に張り紙を貼ったり、朝一番で電話しておいてデイサービスがあることを認知させておく必要があります。
また、早めに送迎に向かい、準備などを手伝うことでご来所につながることもあります。
体調不良
迎えに行った玄関先でめまいやフラつきが出てきた、熱が出てきたなどと言い、お休みをされる方も多いです。こういった方は元々あまりデイサービスに乗り気ではない事が多いです。また、とても神経質な方でこのパターンが見られる方が多いです。
そんな中で少しでも体調に不安があったときには、大げさに捉えてこんな状態じゃ外に出れないと訴えます。
もちろん本当に体調が悪い場合も有りますので、ご利用者様の既往症や表情、顔色などを注意して観察します。
ドタキャン返しの方法
お迎えに行った際にご利用者様がお休みしたいと意思表示された場合、まずはその理由を確認します。
明らかな体調不良や外出などの理由がある場合は、今後はわかった時点で事業所の方に連絡をしてもらえるように伝えて去ってください。
体調不良の場合はケアマネに伝える必要がありますので事業所に連絡が必要です。
キャンセル料が発生する場合はその旨を伝える必要があります。キャンセル料の徴収はご利用者様にお休みに対するプレッシャーを与えることも出来ますので、こちらの記事で確認してください。
一方、ただ外出するのをぐずったり、体がだるいなどの慢性的な体調不良、認知状態が怪しいご利用者様がお休みしようとする場合はご利用していただける可能性がありますので、お誘いを行う必要があります。
必要性を説く
デイサービスでの機能訓練や入浴、食事などが与える効果を理解させてデイサービスに行く必要性を認識させます。
「いつまでもご自宅で暮らしたかったらいつまでも自分で歩けるように、歩行訓練しないとだめですよ」とか「浴室でおなくなりになく方は年間20,000人近いんですよ。だから入浴はデイサービスでしないといけませんよ」などとお誘いかけします。
その方がどんな目的を持ってデイサービスに通われているかを知っておかねばなりません。
人を介した勧誘
「お休みばかりしていると娘さんに怒られちゃうよ」
などと、ご利用者様の家族やケアマネ、デイサービスの職員など、恐怖心を感じている人物の名前を出して、お誘いします。意外な人物がキーパソンになっている場合も有りますのでその方がどんな人に依存しているのかを探っておきます。
私の経験上、主治医の先生の名前を出したり後見人の名前を出すと動いてくれるケースが有ります。先生と呼ばれる立場の方には特別尊敬の念を持たれている方が多いのかもしれません。
「お休みされちゃうと私(送迎担当者)が娘さんに怒られちゃうよ」などと、同情を誘うのも有効かもしれません。
逆に「〇〇さんが待ってるよ」
などと、ほかのご利用者様や職員の名前を出してご利用者様のご来所を待っている人がいる話をします。仲の良いご利用者様や職員の名前を出すことによってデイサービスは楽しいところだと思い出させます。
事前に仲のいいご利用者様や職員をチェックしておく必要があります。
体調不安の取り除く
体調不良に不安を訴える方には、「デイサービスに行って熱や血圧を測ってみましょう。デイサービスの看護師さんに見てもらった方がいいよ」などと、デイサービスに行ったほうが安心であると思わせることが重要です。
私の経験したご利用者様で、熱があるからとお休みしようと言う方のお迎えに行く際に毎回体温計を持参してその場で計っていたことがあります。
また、ご利用者様の既往症を熟しておき、症状についても把握しておくことでこの人は病気のことを知っている人であると思わせることも効果的です。
認知症のあるご利用者様には
休みがちな認知症のあるご利用者様を来所させるための方法は様々です。その方の症状に合わせてうまく誘導する必要があります。
嘘も方便ですので、うまくコミュニケーションを取ればドタキャン返しをできるかもしれません。また、外に連れ出すためのキーワードがあるかもしれませんのでいろいろな話を振ってみましょう。
また、職員の顔を中々覚えてもらえないご利用者様にはご家族の音声や動画を撮らせてもらって見せるという方法が有効です。
お子さんが「お父さん、僕が頼んでおいたんだから、ちゃんとデイサービス行かないとだめだよ!」程度の動画や音声を聞かせるだけでもご利用者様の安心感につながります。
認知症を患っている方の場合、知らない人に心を開かない場合が多いです。知っている方の姿や声を聴くことで安心する場合が多いです。
どんな職員でもスマホを持っているでしょうから担当者会議などで来所拒否があるという情報を得たら、ご家族などにデイサービスへの来所を促す動画や音声を撮らせてもらいましょう。
ドタキャン返しの単価を考える
ドタキャン返し(ドタキャンを訴えるご利用者様をご来所させること)ができるのは現場の送迎担当者だけです。
顧客単価を計算する記事でご説明しましたが、一人のドタキャン返しを成功させると私の3~5時間利用のデイサービスでも6,372円の収益が確保されます。
7~9時間ご利用のデイサービスであれば10,000円を超える売上を上げることができます。
ですから、私はドタキャン返しをするための能力開発や情報共有のための時間や打ち合わせにはかなりの時間や費用を割いています。
また、送迎担当者ないで情報を共有するためのノートを作ったり送迎表にドタキャン返しをするための情報を記入しておけば、別の担当者が送迎する場合でも対応がしやすくなります。
私は送迎業務を甘く見ては行けないと思います。最も優秀な職員を配置し時間や費用をかけるべき業務だと思い対応して行くべきだと思います。
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