この記事では、営業施策とサービスの向上施策が何に影響を与えているのかを整理し、営業施策のどこに課題があるのかを考えるヒントを学術論文を参考にしながら書きたいと思います。
デイサービスの店舗運営が成功している状態とは、どのような状態を指すのでしょうか?
すごく売上が上がっている店舗、利用者の満足度が高い店舗、関係者(従業員・利用者・利用者の家族)の笑顔が多い店舗・・・
どれも正解だと思いますが、ここでは「成功している店舗」を「稼働率が100%に近い店舗」と定義したいと思います。
もし稼働率が100%から遠いのであれば、下記のいずれかに課題があると考えます。
- 新規の利用者が増えない
- 利用者がすぐに辞めてしまう
この記事では「新規の利用者が増えない」場合を取り上げます。
新規利用者増に課題があるケースでは、営業施策の量が足りていない、もしくは適切な施策ができていないのだと考えます。
以前の記事で書きましたが、デイサービスの最大の営業先はケアマネージャーです。雑な言い方になりますが、利用者への営業を重ねても新規利用者の増加にはそれほど寄与しないことを、私は経験から知っています。
利用者が自ら能動的に施設を探し、入所を希望するケースもありますが、割合としては非常に少ないです。
そのため以前は行っていた、近隣住宅へのポスティング施策や、営業者に店舗のログを貼って認知度を上げる、という利用者に向けた営業施策は今は行っていません。
デイサービスのビジネスモデルは、下記の図のようになると考えています。
営業先とサービス利用者が異なるという珍しいビジネスモデルになります。
左側のケアマネージャーに施策を行うことにより新規利用者を増やし、右側の利用者に向けて施策を行うことにより、継続利用者を増やしていきます。
それにより、稼働率を高め、成功する店舗に近づけていきます。
では、ケアマネージャーへの営業で意識しなければならないことは何か。
ケアマネージャーに「一番最初に思い出してもらえる」店舗として、認識してもらえるように営業をしましょう。
一番に思い出してもらえる理由は何でも構いません。
- サービスに特徴のある店舗である
- サービスパーソンがいつも笑顔で気持ちが良い
- 営業の人間の感じが良く、会うと気分がよくなれる・・・etc
なぜ「一番最初に思い出して」もらえないといけないのでしょうか。
下記の図は1980年にBrisoux and Larocheの論文で書かれた、
「ある製品を選定するときにどのように頭の中で振り分けているか」ということを図示したものです。
図の下部の黒い矢印を簡単に説明します。
知名段階:知っている/知らない
処理段階:良く知っているかどうか(特徴を言えるかどうか)
考慮段階:選択肢となり得るかどうか
想起集合:選択先として候補に入っている
保留集合:特徴を知っているが、明確に選択対象に入っている
拒否集合:特徴を知っているが、何らかの理由で選択したくない
このトーナメント表のような図を右上に向けて突破していかねばなりません。黄色の想起集合に入って初めて選択してもらえる可能性が出てくるのです。
あるマーケティングカンパニーの調査によると、一人の人間の想起集合に入れるのは「3つ」だそうです。なかなか厳しい勝負ですね。
ケアマネージャーの頭の中を想像して、いま自分の店舗がケアマネージャートーナメント表のどの段階にいるのか考えてみましょう。それにより、やるべき施策が変わってくるはずです。
本記事は、トライバルメディアハウスの池田さんのnoteの記事、
早稲田大学の恩藏 直人教授の論文を参考にして執筆しました。