ビジネス英語が大量に輸入されてきた頃、win-winという言葉がとても流行った時期がありました。
winとは勝者という意味で、ある関係者とビジネス関係を結ぶ時、両者がwin-winの関係を築けないとそのビジネスはうまく行かないと言うようなことを説明する言葉です。
長いビジネス関係を維持したいなら自分の利益だけを考えず、相手にも利益を与えるようなポジションを取りなさいと教えるものなのでしょう。
今ではそこから派生したwin-win-winの関係という用語が用いられることもあります。ちなみにwin-win-winの関係とは三者のビジネスパートナーの利益配分を表すような言葉としても使われるようになってきました。
win-winの関係の弱点
しかし、この言葉には大きな弱点があると思っています。
それは利益の割合が示されていなことです。
お互いwin-winだったとしてもそれが1:9の関係だったり、2:8の関係だと必ずほころびが出てしまうと思っています。
例えば、大手メーカーが下請け工場に対して、ギリギリの利益しか出ないような条件で発注を行っていたり、消費税の支払いを拒否されたり、出版社が作家に対して出版するなら1000冊は自分で買い取らなければならないという契約を結ばせたりと言った話がよく聞かれます。
これらは大きな権力を使った圧力行為にほかならず、到底まともなビジネス関係とは思えません。
しかし、win-winという言葉はこの関係性を肯定してしまいます。
下請け工場や作家にも微量ながら利益が見込まれるからです。
こう言った関係はいつまでも続かないように思います。
win-winという言葉が権力側にいいように使われてしまうことになっているのです。
そのためにも、呼び方を50-50(fifty-fifty)の関係とか5分5分の関係などの呼び方にしたほうがいいと思います。それであれば対等な関係の上でお互いが利益を得ることができる関係を表現することができる事になります。
デイサービスでのwin-winの関係
win-winの関係という経営用語は基本的に事業者間の取引において使われることが多いのですが、それは消費者とサービス提供者の間にも当てはまる言葉でもあります。
そんなことはわかっていると言われてしまいそうですが、もう少し聞いてください。
商品を消費者に売る場合、商品の内容は時や場合によって変わることはなく価格も安定しているので消費者はお金の対価に見合わなければ購入しなければいいですし、見合えば購入することになります。
しかしサービス業の場合はサービスの質は提供者側の能力や努力で変わってくるものです。私が心配するのはデイサービスにおいて職員の過剰サービスによってご利用者様をより満足させることが出来たとした結果、職員の疲弊が起きることがよくあるという事実です。
特に介護業界で働く職員は自分の出来る限り全力で職務に全うしすぎる面があります。
サービスの質を高めることはとても素晴らしいことですが、それのために職員が損をしていてはこの関係は長続きしません。
サービスの質を落とす(もちろん一般レベルは保った上で)か職員の配置を増やす必要があるでしょう。
私はご利用者様と職員と経営側が三方33%ずつ利益を分け合うサービスの提供を基準にするようにと職員にお願いをしています。