数年前の話ですがある入浴担当のパートさんから、同じ時間に働いている別の職員と比べて自分のほうが困難なご利用者様の対応が多すぎるとクレームがありました。
この手の不満は管理者によく寄せられる類の不満ではないでしょうか。
そういった不満が出た場合、大体は困難なご利用者様の対応を交互に行ったり、移乗や着替えなどの困難な場面のみは2人対応とするなどして不満を解消するのですが、その時はそれでは収まりませんでした。
『私がどれだけ大変なご利用者様ばかり押し付けられているのか、理解してください』と担当しているご利用者様がこれだけ難易度が高いのかと評価をつけているノートを見せて来たのです。
各利用者の名前の後に○✕△と言うようにその職員の評価が付けられていて、最近は✕ばかりやらされるというのです。
少し驚きましたが、その反面この評価制度は面白いと思いました。
これを使えば職員の業務を平準化できるのではないかと思ったのです。
業務の難易度
そこで私はご利用者様ごとに入浴介助の難易度をつけてみることにしました。
覚悟利用者様の入浴介助の難しさを1から5までに振り分けて、困難なご利用者様が偏らないように数値化しようというのです。
ほぼ着替えから洗身洗髪、浴槽の跨ぎまでご自身で出来てしまう方であったら困難度『1』とするというような感じです。
基本的に介護度をベースとして下記のような基準を作りました。
- 困難度1:ほぼご自身で可能、見守りのみ
- 困難度2:着替えの手伝い、浴槽の跨ぎの介助が必要
- 困難度3:機械式浴槽の利用が必要
- 困難度4:身体接触の必要な移乗が必要
- 困難度5:体重が60kg以上で体の接触の必要な移乗が必要
これを基準に入浴担当の職員を全員集め、全てのご利用者様に難易度を振って行きました。
統一基準での判断を心がけたせいで少し時間がかかりましたが、1ヶ月ほどで全員に難易度を振ることが出来ました。
いざ運用
さて、難易度をつけた後はそれを実際に運用しなければなりません。
入浴担当の職員が一日に対応するご利用者の難易度の平均が同値になるように調整をしていきました。
また、難易度が高めの方を対応した後は難易度低めの方を入れるなど、負担のかかるご利用者様が続かないような編成も組むことも指示しました。
これならば普段からどの職員の負担がかかっているのか周りも理解することができる『見える化』の一端と期待して始めました。
しかし結論から言って、この試みは失敗に終わりました。
朝、管理者と入浴担当者が入浴の順番を決めるのですが、それに時間がかかりすぎてしまったのです。
ご利用者様の休みや振替利用があると難易度を揃えるために全体の順番や担当のご利用者様の変更を行わなければならなくなるため毎朝時間を食ってしまったのです。
管理者からも入浴担当者からももとに戻してほしいと指摘されてしまいました。
難易度の使い方
残念ながらこの時の試みは失敗に終わりましたが、難易度は他で活用することができました。
例えばパートの方々の人事評価やボーナスの評価に使うことができました。
難易度の高いご利用者様を積極的に介助してくれたり、続けざまに対応してくれた職員には少し多めにボーナスを出すようにしています。
私のデイサービスでは入浴介助の回数で加算の給与を払っているのですが、下記のように難易度によってその金額を変えることも視野に入れています。
難易度1の方の入浴介助で+50円
難易度5の方の入浴介助で+100円
また、入浴以外の業務に関しても困難度を割り振ることも可能です。
送迎業務や機能訓練、食事介助などにも割り振ることが可能かもしれません。
職員の平等化
難易度をつけることの目的は業務の偏りを可視化することです。そして職員の平等にあつかい不満をなくすことです。
無理に難易度を調整することは難しければ評価して上げることで不満を解消する方法もあります。
他の職員が感謝をするきっかけになるかもしれません。
皆様も参考にしていただければと思います。
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