管理者は介護保険上の人員基準に定められたデイサービスの役職の一つです。
各施設に1名置かれたこの役職は、文字通りデイサービスの内外を管理する施設のリーダーです。
私は
介護職員は最終的には経営者として独立すること
をお勧めしていますが、その前段階としてぜひとも
施設の管理者を経験してほしい
と思っています。
当然収入は施設の中でトップを誇り、大きな事業所であったり利益を上げていたりすれば600万円以上の年収をもらっている方もいらっしゃいます。
また、管理者をやってみると経営者の視点に立って、物事を見たり判断することができます。
経営者になるための準備にとても役に立つのです。
今回の記事では管理者がやるべき業務と必要な資質について話していきますので、今後管理者を目指す方は参考にしてみてください。
目次
管理者がやるべきことは『経営者を安心させること』
デイサービスにおいて管理者に資格要件はありません。
条件は常勤であることだけです。
つまり、現場の業務上、管理者しか出来ないことはないということです。
私は管理者がやるべき仕事を一言で説明するとき
経営者を安心させてること
と答えています。
つまり、問題を起こさず利益を出し続ける施設であり続けるために管理することによって、経営者が安心して他の事業へのテコ入れや新規事業に力を注げるようにすることです。
管理者は現場側か経営側かと言ったら間違いなく経営側にいる役職です。大きな法人であれば役員や事業部長レベルの立ち位置になります。
理想は中のごたごたは見せずに、目標を達成した月の業績報告を経営者に上げ続けるような管理者です。
※こんな人いたら正直いくらでも雇いたい・・・
では、具体的に管理者が行わなければならない業務はどのようなものかと申し上げると、下記の5つになります。
- 営業利益(売上・費用)の管理
- コンプライアンスの管理
- 請求や現金集金などお金の管理
- 行政対応
- 職員の人事管理
営業利益(売上・費用)の管理
利益の管理とは経営者が望むような利益を上げるために売上や費用に目標を設定し、その時々の売上の状況や費用の掛かり方を把握し、足りない場合に何らかの施策を実行することです。
利益を出せない事業所は営業している意味がありません。
自分の施設がどのような売り上げ構成になっていて、どのような費用が掛かっていてどのくらいの利益を出しているのか把握しなければなりません。
そしてそれを踏まえたうえで毎月、会議などの場で前月の目標達成率と当月の目標を発表します。
※利益を上げるための施策については下記の記事にて詳しく説明しています。
『【デイサービス(通所介護)の売上利益分析】デイサービスはもはや儲からないのか』
管理者が自ら営業活動を行う必要はありません。
従業員も巻き込んで、施設として目標や現状共有することが大切です。
従業員に対しても売り上げに対する意識を持たせ、各々どう動いたら売上増につながるか、費用削減につながるか考えさせるのも管理者の役目です。
コンプライアンスの管理
デイサービスの運営には介護保険法や労働基準法など、数多くの法律が絡んできます。
これらの法律を守りながら運営しているか常に目を光らせながら業務を回していくことが管理者の最も大事な仕事です。
現場を回すことだけに追われていると人員基準や運営基準を見落としてしまうことがあります。
ですから管理者はコンプライアンスに関する意識が高く、知識が豊富でなければなりません。
法律関係に関しては真面目すぎるほど真面目で慎重すぎるほど慎重であってしかるべきです。
お金の管理
お金の出入りに関することは管理者がすべて把握していなければなりません。
毎日の出納帳と現金を合わせなくてはなりません。
特に介護保険事業において入金に対する管理はとても重要です。
介護保険請求を誤ってしまうと、1か月分の売上の入金がすべて遅れてしまうなどということがあり得るからです。
介護保険請求の伝送については必ず管理者が最後に確認をして送信ボタンを押さななければなりません。
また、ご利用者様負担の請求回収に関しても、管理を怠るとどんどんたまってしまい最終的に回収不能になってしまう可能性があります。
当然出金に関する管理も行う必要があります。
管理者の負担を減らすためにできる限りの出金を本社での振り込み、口座引き落としやクレジットカード払いにしたほうが良いでしょう。
行政対応
管理者は行政対応の窓口となります。
行政にとっては事業所の責任者は経営者でも役員でもなく、登録されている管理者です。
ですから、実地指導や集団指導を受ける際も必ず管理者宛に連絡が来て、管理者の出席を求められます。
実地指導の対応についてはこちら
また、行政に寄せられたクレームについても管理者が対応しなければなりませんが、施設に直接きたクレームについても管理者が対応しましょう。
人事管理
また、職員の人事管理も管理者が行わなければなりません。
シフトの作成や評価、指導などはもちろんですが、持っても大事なことは職員間のごたごたを見抜き、解決へと方向付けることです。
デイサービスにおける管理者の最も重要な能力について教えてほしいと聞かれることがあります。
そんな時、私は必ず
従業員を誰も辞めさせずに運営していく力
と答えています。
それを裏付けるエピソードがありました。
職員達への洞察力
私が雇われ管理者として初めてデイサービスやってきたことの話です。
その頃、介護のかの字も知らなかった私はとにかく売上を伸ばすことと、現場を回すことだけを考えて日々仕事に明け暮れていました。
小規模デイサービスということもあり、管理者が現場の作業をするのが当たり前であった点も運が悪かったのですが、管理者としての業務を意識することは殆どなく、営業や現場の仕事に没頭していました。
ところが、売上も順調に伸び、赤字から転換しようとしていたある日、1人の職員が別の職員とのトラブルで辞めたいと言ってきたことがありました。
その時の私は寝耳に水でしたが、職員は「坂元さんにSOSを出していたのに気づいてもらえなかった」と言っていました。
結局私の対応が後手後手にまわってしまった結果、結局引き留めることはできませんでした。
その職員はご利用者様からの信頼も厚く、また、ほかの職員からも好かれていたため、利用者数名と職員1名が後を追ってやめてしまいました。
自分は管理者であって、管理者の仕事をしていなかったことを痛感したできごとでした。
命を預かる仕事柄、職員たちは日ごろからストレスを抱えながら仕事をしていることが多いです。
ふとしたことをきっかけに、職員たちの中に派閥が生まれたり、いさかいが生じたりします。
それはなかなか見つけにくいことが多いです。
ですから、些細な表情の違いや言動の違いを見抜き、いち早く解決へ動かなければなりません。
平等に扱い裁定を下す平衡感覚
また、職員間のトラブルを発見しても、やみくもに動いても解決するどころかさらにこじらせてしまう結果になってしまいます。
管理者は
職員を平等に扱い、裁定を下さなければ
なりません。
決して一方の言い分だけを聞いて判断してはいけません。人は必ず自分に都合の良い話ばかりをします。
できるだけお互いを呼んで管理者が中に入って、仲直りさせることを前提に話し合いの場を持ってください。
その際にどちらが悪いというわけでもなく、どちらも悪いところがあったので、お互い歩み寄っていこうと結論に持っていければ最高です。
ただ、その判断の軸がずれていたりダブルスタンダードになってしまっていては職員が納得しないかもしれません。
とても難しいですが、私はこれこそが管理者の最も大事な資質だと思っています。
【管理・営業業務の記事はこちら】