介護職員処遇改善交付金
処遇改善加算の前進である「介護職員処遇改善交付金」は平成21年度に他の業種との賃金格差をなくし介護事業者の雇用を安定させる目的で創設されました。
この交付金では介護職員の月給を1万5千円上げることを目標に定められており、介護給付費総額にサービス区分ごとに定められたパーセンテージをかけた金額が事業者に支払われました。
デイサービスでは介護給付に1.9%をかけた金額が支払われましたので、100万円の給付費を請求している事業所は1.9万円いただけるということになります。
介護職員処遇改善交付金は平成23年度までの3年間で終わってしまいます。その大きな理由は交付金は全て公費で支払われていたため、財政を圧迫するからというものでした。
交付金額は年間2,000億円にも上り厚生労働省は交付金を廃止し、翌年の平成24年度より処遇改善加算制度をスタートさせました。
介護職員処遇改善加算の歴史
平成24年:処遇改善加算の始まり
介護職員処遇改善加算と交付金との大きな違いは交付金が公費100%で支給されていたところ、処遇改善加算に変更されたことで、公費:9割、ご利用者様負担:1割となったことです。
但し、介護保険の上限額には算定しません。
加算の支払い方法は介護給付費の総額に支給割合をかけた金額が介護給付費と一緒に入金されました。また、旧割合は交付金のものを踏襲するなど制度上の変更はそれほどありませんでした。
平成27年度の改正
平成27年度介護報酬改定では、介護職員処遇改善加算について、確実に処遇改善を担保するため、現行の加算の位置付けを前提として、更なる資質向上を前提とした評価を実施しました。
具体的には、キャリアパス要件として、①職位、職責又は職務内容等に応じた任用要件及び賃金
体系を定め、かつ、②介護職員の資質向上のための計画を策定し、当該計画に係る研修の実施又は研修の機会を確保していること等を満たす事業所を対象に、上乗せ評価(月額平均1.2万円相当)を行う区分(新処遇改善加算Ⅰ)を新設しました。これによって、処遇改善加算はⅠ~Ⅳの4段階に分けられました。
デイサービスではこれまでの処遇改善加算Ⅰの支払い率が1.9%であったところ、4.0%にアップしました。正社員の月給を総計2.7万円引き上げた計算になるということでした。
ただし、この年の介護給付費の改定でデイサービスは軒並み削減を受け、特に小規模デイサービスは-10%改定という凄まじいマイナス改定を受けています。
介護給付費の大幅削減と処遇改善加算の増加を同時に行う姿勢は経営者にとって減算の穴埋めとも受け取られ、処遇改善加算の増加分がきちんと従業員へ回されたのか疑問が残ります。
平成29年度の改正
平成27年度介護報酬改定では、介護職員処遇改善加算について、事業者による、昇給と結びついた形でのキャリアアップの仕組みの構築について、手厚く評価を行うための区分を新設しました。これにより処遇改善加算はⅠ~Ⅴの5つの段階に分けられるようになり、正社員の月給は総計3.7万円増加する計算となります。
新設する区分の具体的な内容については、現行の介護職員処遇改善加算(Ⅰ)の算定に必要な要件に加えて、新たに、「経験若しくは資格等に応じて昇給する仕組み又は一定の基準に基づき定期に昇給を判定する仕組みを設けること(就業規則等の明確な書面での整備・全ての介護職員への周知を含む)」とのキャリアパス要件を設け、これらを全て満たすことを要することとする、としています。
キャリアパス要件
処遇改善加算は必ず取得しておきたい加算です。しかしそのためにはデイサービス内でキャリアや資格に応じたポジションを創設し、条件や給料面を含めてしっかりと制度化する必要があります。
小規模デイサービスでは正社員数が少ないためポジションを多く設定することが難しく、キャリアパスをえがきにくいかもしれません。
もし、頭を悩ませているようでしたら、私が考えているキャリアパスについての記事を参考にしてみてはいかがでしょうか。
正社員におけるキャリアパスについてはこちらを参考にしてください。
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