介護事業を長年行っているのに知らなかった『介護保険深堀りシリーズ』第2段
今回は市区町村の役割についてまとめてみました。
※区は東京23区の特別行政区のみを示します。
実際現場にいる人間にとっても経営を行っていても指定の申請や研修や指導でしか合わない役所の介護保険課。
(建前では)介護保険の主役であり、リーダーである市区町村。
どのような仕組みでどのような役割を与えられているか見ていきましょう。
目次
市区町村の事務とは
日本における行政区は階層別に国、都道府県、市(区)町村に分けられています。
我々が暮らす全ての地区は国、都道府県、市区町村に所属していることになります。
私であれば日本国、東京都、目黒区といった感じです。
住民が暮らしていくためには行政が行う多くの行政事務によって成り立っていることはご存知でしょう。
道路を作ったり、医療保険制度を運営したり、税金を徴収したり、選挙を運営したり、その事務は多種多様です。
そして各々の事務はどの階層が行うのか決められており、重複や過不足がないように調整されています。
例えば、公立小学校の運営であれば市区町村が行っていますが、公立高校は都道府県が運営しています。
お互いに学校を運営してしまっては過不足が発生してしまう可能性が出てきてしまうのです。
自治事務と法定受託事務
さて、市区町村が行っている事務は自治事務と法定受託事務に分けられています。
簡単に言うと自治事務は本来市区町村が行うべき事務であり、国や都道府県の関わりが薄いジムのことで、法定受託事務は国や都道府県が本来やるべき事務だが、市区町村に委託している事務を指します。
法定自宅事務に関しては国や都道府県は受託の停止を行うことができるなどかなり強く関わりを持つことになります。
さて、肝心の介護保険制度の話しに戻りますが、介護保険の事務は市区町村が行う自治事務と位置づけられています。
つまり介護保険の主体は市区町村であるということが明確に示されているのです。
介護保険における市区町村の役割
介護保険の運用は市区町村の自治事務です。つまり市区町村が主体となって行う事務に当たります。
その証左として下記の様な事務が市区町村に割り当てられています。
- 介護事業の根底となる介護計画(予算)の策定
- (第1号被保険者の)介護保険料の決定
- 介護保険の保険者(認定調査、給付の管理)としての役割
- サービス事業者数の調整(限定的)
保険事業で最も重要な保険料の計算と保険者としての役割が任されているのは画期的です。
これまでの健康保険料にしても地方税にしても市区町村に費用の計算が託された試しはありませんでした。
この保険料の計算事務は読みを間違えてしまうと大きな混乱を生んでしまうため、市区町村にかかるプレッシャーは甚大です。
保険料の決め方
保険料収納必要額÷予定保険料収納率÷第1号被保険者数
第1号被保険者の保険料は下記の計算式で決められます。
予定保険用収納率とは介護保険料の納付率に当たります。
保険料収納必要額
保険料収納必要額とは下記にあげる費用から収入を引いた数字です。介護計画の作成とともに3年毎に計算されます。
3年間という期間は介護報酬の改定などの基準ともなっています。
介護保険における費用
- 介護給付及び予防給付に要する費用
- 市町村特別給付に関する費用
- 財政安定化基金拠出の納付に要する費用(借り入れの返済も)
- 保健福祉事業に要する費用
- その他介護保険事業に要する費用の合計
収入として控除されるもの
- 国庫負担金
- 第2号被保険者の保険料
- 都道府県負担金
介護保険事業計画の策定
介護保険事業計画の目的は要介護者に必要なサービスを適切に提供するために要介護者の需要と供給量の調査を行い、その誤差を調整することです。
そのために市区町村が3年毎に事業計画を策定します。
- その他の介護給付費等対象サービスの種類ごとの量の見込み並びにその見込量確保のための方策
- 各年度のおける地域支援事業に要する費用の額並びにその見込量の確保のための方策
- 介護給付事業者間の連携の確保等介護給付等対象サービスの円滑な提供を図るための事業
- 介護予防給付事業者間の連携の確保等介護給付等対象サービスの円滑な提供を図るための事業
- その他保険給付の円滑な実施のため必要な事項
包括的支援事業(地域包括支援センターの設置運営)
地域包括支援センターが地域の高齢者や要介護者などの生活困難者の総合的窓口となり得るように機能の強化を行います。
地域密着型サービスの整備
様々な条件を総合的に勘案して定める区域(日常生活圏域)における各年度の係る必要利用定員総数
- 地域密着型認知症対応型共同生活介護
- 特定施設入居者生活介護
- 介護老人福祉施設入所者生活介護
今後の市区町村の役割
市区町村は介護サービスの需要や供給量について把握しているものの、ほとんどの介護サービスへの参入は自由(指定制度・民間の活用)に行われています。
そのため、供給過多な事業と不足している事業に差が生じてしまっています。
この介護サービス事業者の過不足は介護給付費によって調整されることになるが、介護給付費を決めているのが厚生労働省の諮問機関である社会保障審議会の介護部会です。
つまり実際の事業者数の調整は厚生労働省によって行われており、市区町村の関与が薄いように思わます。
実際事業所数の調整を行っているの地域密着のグループホームなどの小規模の施設系介護のみであるためです。
市区町村に介護需要を読む能力があれば、供給の調整も行うべきかもしれません。つまり介護給付費の設定を市区町村が行うということです。
今後の介護給付費の設定も市区町村が担っていく可能性は十分にあると思われます。
介護予防・日常生活支援事業が始まり、要支援者の通所介護や訪問介護が市区町村の事業に組み込まれ介護給付費の設定を行うようになっています。
これは市区町村に介護給付費の設定の権限を移譲させていく布石となっていると感じています。
それには厚生労働省を黙らすほどの運営を市区町村が行えることが前提となるのは言うまでもありませんが。
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