デイサービスをご利用になるご利用者様も様々な状態、環境で暮らしている方がいらっしゃいますが、それと同様にご利用者様のご家族も多種多様です。とても面倒見の良いお嫁さんもいれば、ご利用者様のことにまるで関与してくれないご家族もいらっしゃいました。中には虐待まがいなことを行う家族も居たりと我々としても黙って見ているわけには行かないケースもたくさんありました。
このシリーズでは私が出会ってきたご利用者様のご家族の中で印象深かった方を紹介して、どのように対処してきたのかお話していきたいと思います。
※出て来る個人や状況等は多少の変更を加えております。
金銭を付け狙う息子
ご家族と金銭的問題を抱えているご利用者様は数多くいらっしゃいます。その中でも特にひどかったのが、夫の連れ子に財産を狙われたケースでした。ご利用者様は90歳を超えた女性で、軽度の認知症を患っており夫は20年も前に亡くしています。子供は長男(夫の連れ子)と長女が居ましたが長女は嫁いでからほとんど交流もない状態でした。夫と二人三脚で靴の製造販売業を営み築いてきた財産がありました。
その長男は60歳を過ぎているのですが、最近になって女性に財産があることを知ってそれをせしめようというのでした。
最初は女性に対して生前贈与を要求してきたので女性は拒んでいたのですが、そのうちに勝手に自宅に侵入して荷物を漁ったりするようになっていました。鍵をかけても合鍵を作っているようで自由に入ってこれてしまうというのです。
ケアマネジャーもその事実については把握しており、息子さんと連絡を取っていました。息子さんは家庭のことと耳を貸す様子もなく、効果はありませんでした。
ひとまずの対策として通帳や印鑑などの貴重品は常に持ち歩くようにするということでしたので、デイサービスとしても特別に許可を出して肌身離さずにお持ちなっていただくことにしました。
土地売却事件
ある日、事件が起こりました。息子が土地の権利書や登記証明書などを持ち出して家の敷地を一部売却しようとしたのです。不動産会社が現地確認に来たことでそれがわかったのですが、そのまま黙っていたら本当に売られてしまっていたかもしれません。
ご本人にはそれほど危機感はないのか、「昨日、不動産の人が来てこの土地を売り払うっていうんだよ」などとおっしゃっていたのを聞いて、詳しく聞いてみると上記のような事になっているのでした。
それをケアマネジャーに報告するとそれは大変だと地域包括支援センターに直ぐに連絡を取り助言を仰ぎました。
成年後見人
地域包括支援センターの判断は今後認知症が進んでしまう可能性も考えた上で、彼女には成年後見人をつけることでした。
成年後見人制度とは正常な判断が難しい方のために生活や医療、介護などで困らないように保護するための制度で、後見人は財産の管理や大きな額に及ぶ契約行為などを代わりに行います。
後見人は家族や弁護士や社会福祉士などの専門家の中から家庭裁判所が専任します。
今回のケースでは地域包括支援センター推薦の弁護士が後見人となり財産の管理を行うことになりました。報酬は月々3万円程度だったと思います。新しい介護サービスの承認や入院時の契約も可能になるので、介護の現場としては迅速な動きができるため有効です。
息子にはその旨を連絡すると流石に諦めたようで、ご利用者様のお宅に来ることはなくなりました。
結局
最終的にはそのご利用者様は認知症が進んできたため特養への入所しました。入居の手続きや契約も後見人が関与してくれたのでスムーズに進んだようです。お金に余裕があったためとても良い環境の施設に入ることができ、今でもお幸せに暮らしていると聞きます。
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