当サイトが推奨するM&Aの手順です。
面倒な手続きを極力排除した簡易なM&Aのモデルを推奨します。
M&Aと言うと難しく考えてしまう方が多いでしょう。
それは弁護士やコンサルタントなどが難しい用語を使って難しく考えさせているだけです。
デイサービス経営者であればまるで難しいことはないです。
通常行っているお金の流れや業務内容について調査を行い、買取価格を交渉して売買契約を結べばいいだけです。
時間だって思ったよりかかりません。
契約書も雛形を掲載しています。
基本的に経営者が100%株式所有、株式譲渡契約を念頭に作成しています。
M&Aの手順(マッチング後)
①経営者面談
秘密保持契約締結 基本資料開示 |
1日 |
マッチング終了後、経営者間で面談を行います。
ここで買収意図の確認と今後買収交渉をするべき事案か判断します。
社長の人柄を確認し「経営理念」や「企業文化」が自社と合うかを確認するのも重要です。
基本資料を開示する前に秘密保持契約書を締結しましょう。
譲渡側の用意する基本資料
- 決算書3期分(総勘定元帳含む)
- 月間収支表(直近3年分)
- 会社謄本・定款
- 株主名簿・組織図
- パンフレット・ホームページの情報
- 不動産の情報(賃貸契約書・保有不動産の登記簿)など
譲受側の用意する基本資料
- 現在の事業内容
- 今後の事業所の経営方針
- 買収に掛かるお金の調達について
などを提案書としてまとめておきます。
また、契約が株式譲渡になるのか事業譲渡になるのか意向がある場合は伝えておいたほうが良いでしょう。
介護事業の場合、法人が指定申請を行っていますので、可能な限り株式譲渡を行うのがベストです。
②交渉開始
事業所訪問 詳細資料開示 質疑応答 役員処遇の決定 価格交渉 |
1ヶ月 |
経営者面談で交渉開始を確認したら事業所の訪問を行います。
従業員に悟られないようにケアマネの見学や他のデイサービス経営者の見学などと言って行います。
できれば施設説明を従業員にやってもらいましょう。
そこで従業員が見学に来たご利用者様に対応するレベルを確認できます。
見るべきところは
従業員の対応
- 社長に対する態度
- ご利用者様に対する対応
- 業務の職員間の連携
- 施設説明のレベル
施設設備
- 清掃が行き届いているか
- 備品、車輌、トレーニングマシン、機械浴などの状態
書類関連
- ご利用者様の契約書類などがきちんと整理されているか
- 通所介護計画書や機能訓練計画書などが作成されているか
事業所訪問時に詳細資料を頂きます。
詳細資料に関しては時間をかけてじっくり確認していきましょう。
質疑に関してはある程度まとめてメールなどデータに残るような形でやりとりしましょう。
詳細資料
- 営業記録(居宅介護支援事業やポスティングなど)
- 従業員名簿、給与台帳、社内規定(就業規則・退職金規定など)
- 固定資産台帳
- 銀行(金融機関)関連契約書
- リース契約書
- 保険契約書(生命保険、損害保険、自動車保険)
- 指定申請書(変更届)
- 社会保険、労働保険支払い記録、納税証明書(国税・地方税)など
役員処遇の決定は元社長や役員に慰労退職金を支払うのか、顧問として雇うのかなどを考えます。
小規模デイサービスではなかなかこのような対応は難しいと思いますが、営業能力に長けている役員や新規店舗開発に長けている役員なんかは採用する価値があるかもしれません。詳細資料を確認しながら価格交渉に入っていきます。価格交渉は最も難しい作業です。ここに来て相手方の態度が一変することもありますのでデリケートに行います。
基準となる価格の算出
中小企業の企業価値算定によく使われる方法として「時価純資産+営業権」が上げられます。
時価純資産とは時価総資産額-時価総負債で表されます。
デイサービスの資産としてはリフォーム代金(建物)や車両代、国保連からの未収の介護給付費などが上げられます。
不動産を所有している場合は不動産鑑定士などに依頼(デューデリジェンス時でもOK)して時価を鑑定してもらいます。ただし、規模が小さい場合は簿価や路線価で設定してもいいです。
決算書には載っているが事業に使われておらず経営者が個人で使っているものなんかは抜いて計算します。
次に営業権ですが、これは今後当然に入ってくる利益の総和ということです。
基準は営業利益を使います。そこから減価償却費や過剰な役員報酬額をプラスしてでた修正キャッシュフローに通常3年から5年分をかけて算出されることが多いです。デイサービスに関しては業界のリスクは少ないと考えており5年で計算してもいいと考えています。
※役員報酬の過剰分は経営者が行っている業務分以上にもらっている報酬になります。
つまり買収後は支払わなくても良いことになる支出ということです。
ちなみに上記例の場合
純資産2,000万円+営業権(1,000万円+200万円+800万円)×5年
=1億2,000万円となります。
ここで利用した企業価格算定表
ここで出た買収価格を基準として交渉を始めます。
③デューデリジェンス
基本合意書締結 買収監査の実施 最終売買金額の調整 関係者通知 |
1ヶ月 |
買収価格が決まりましたら基本合意書を締結します。
基本合意書に基本売買価格や最終契約までの日程を記述しておきます。
その後デューデリジェンス(買収監査)を行います。
これは今まで頂いていた資料の裏付けを取リ、売買を決定づける作業です。
デイサービスにおいて重要な情報の裏を取るためのデータを纏めておきます。
請求データの確認
デイサービスの売上は請求ソフトのデータを確認すればほぼ把握できます。
経理担当者などに操作方法を聞きながら利用者数、売上、返戻の額などを調査します。
また、ご利用者様からの未収金について改修の可否を確認します。
入出金の確認
通帳の出入りを半年分程度確認して、把握できていない入出金がないか確認しましょう。
支払決定通知書通りに入金が行われているか、ご利用者様からの入金についても確認します。
出金については全て細かく理由を聞いておきましょう。
資産の情報
不動産を所有している場合は不動産鑑定士を使って汚染や建物の崩落などのリスクを確認します。その他、車は筋トレマシンなどが決算書通りにあるか、車の事故歴はないかやなども調査します。
最終売買価格
デューデリジェンスが終了したら発覚した事項を加味して最終売買価格を決定します。
特に大きな発見がなければ基本合意通りの価格になります。
ここまで来ましたら売買契約へ向けて関係者への通知を行っていきます。
特に重要になってくるのが金融機関への通知です。
契約終了後は元の経営者の連帯保証などの解除が必要になりますので、しっかりと段取りをつけなければなりません。金融機関が渋った場合、最悪一括返済が必要になってしまうこともあります。
また、核となる従業員への挨拶は他の従業員への買収の報告も行います。
下手に情報が漏れてしまうと一斉退職に繋がる可能性もありますので、条件や待遇面や今後の方向性を説明するための会議をいち早く行いましょう。
クロージング
最終合意契約についての取締役会(株主総会)開催 株式譲渡契約締結 譲渡代金入金 |
即日 |
売買に向けて取締役会(取締役会がない場合は株主総会)を開いて契約に関する了承を得ます。譲受側、譲渡側双方必要になります。
株式譲渡契約を締結します。
契約書調印後すぐに入金が行えるように銀行には別の担当者を行かせるなどしておきましょう。
譲渡代金の入金を確認したら出来る限り同日に下記を行ってしまいます。
取締役や株主が多い場合段取りに時間が必要になりますので、前々から準備をしておきましょう。
- 取締役会の開催(代表取締役の変更)
- 株主総会の開催(役員の退任・就任)
- 元経営者の金融機関への債務保証の解除
- 金融機関へ元の経営者の連帯保証の解除、通帳、印鑑などの引き渡し
- 法人登記(第秒取締役、役員の変更)
ここまでで、ひとまずM&Aは終了です。
しかしM&A成立後に問題が発生することはよくあります。お金の問題でトラブルが起きないように、事前の調査をじっくり行った上で交渉を進めていきましょう。