デイサービスを運営されている経営者の皆さんはご利用者様一人あたりの売上単価を知っていますか?
私が付き合ってきた経営者の方でも意外と単価を意識していない方が多いのに驚きます。
小売業や他のサービス業ですと、顧客単価は重要な経営データとして必ず正確に把握しているのですが、介護事業者は介護保険にて売上が決められているためなのか、あまり重要視されていないように感じます。
顧客単価の把握は必ず必要ですので下記を参考に計算してみてください。
提供する商品やサービスが1つ売れる度にどのくらい売上が上がるのかを理解しておけば経営分析や判断を素早く行うことが出来るからです。
デイサービスの顧客単価の出し方
まず、顧客単価とは『全体の売上÷全体のご利用回数』で出される数値で、ご利用者様が1回ご利用された場合に獲得できる売上の平均ということになります。
これなら簡単に顧客単価を出すことが出来ますが、今回はさらなる経営指標を入手するために平均介護度や加算取得率などを出したうえで、計算してみたいと思います。
私のデイサービスの数値を使って計算していますので、実際に計算する際は皆様の事業所のデータを使って計算してください。請求ソフトなどで統計データは手に入るはずです。
平均介護度
平均介護度(利用回数ベース)の出し方は下記のようになります。
要支援や綜合事業のご利用者様を受けている場合は、要介護0.75~1として計算すると良いかもしれません。
要介護者数 × 利用回数 ÷ 全利用回数
要支援と綜合事業の方が22回、要介護1の方が37回、要介護2の方が52回、要介護度3の方が21回名、要介護4の方が15回、要介護5の方が4回であれば
(0.75×20 + 1×35 + 2×52 + 3×21 + 4×15 + 5×8)÷151= 2.09
となり平均介護度(利用回数ベース)は2.09となります。
通所介護費単価(平均介護度ベース)
通所介護費単価とは、デイサービスの基本サービス料である通所介護費を平均介護度毎に出した売上です。
平均介護度で見る、1回ご利用に対する平均売上単価を出していきます。
3~5時間利用のデイサービスで地域加算特級の場合で算出していきます。
介護度5の売上から介護度1の売上を引いて、介護度の上昇段階の4で割ると、介護度が1つ上がるたびに増える売上が出ます。
下記は私のデイサービス「日帰り温泉型デイサービスはつね」の場合の単価です。時間は3~5時間のみの地域密着型通所介護です。
- 介護度5の場合の通所介護費 7,390円
- 介護度1の場合の通所介護費 4,650円
2,740円 ÷ 4 = 685円(介護度が1上がるごとに増える売上)
先程出した平均介護度を使って、下記のように通所介護費単価を出していきます。
通所介護費単価 = 介護度1の売上 + (平均介護度-1)×685円
4,650 + (2.09-1)×685 = 5,396円
ご利用者様1人あたりの通所介護費の平均は5,396円となります
加算取得率
加算取得率は各加算の『提供回数 ÷ 総利用回数』で算出されます。それぞれの加算ごとに算出しておきます。
- 個別機能訓練加算Ⅰ 500円/1回 利用率:57 %
- 入浴加算 550円/1回 利用率:92 %
保険外サービス利用率
保険外サービス利用率も上記のように『提供回数 ÷ 総利用回数』で算出します。それぞれの保険外サービスごとに算出します。
- おやつ 220円/1食 利用率:78 %
単価
これまで出してきた数値を使って、単価を出していきます。
〔通所介護費単価 +(加算単価×加算取得率)〕×処遇改善加算 + (保険外サービス単価×保険外サービス利用率)
〔5,396円 + (個別機能訓練加算Ⅰ 500円 × 57 %) + (入浴加算550円 × 92 %)〕× (1 + 処遇改善加算率)+(おやつ200円 × 78% )
(5,396円 + 285円+ 506円 )× 1.059 + 156円 = 6,372円
となり、1回ご利用を獲得すると6,372円の売上が確保できるという指標が確認できました。
単価の意味
上記でご利用者様1人あたりの平均単価を出すことが出来ましたが、この指標は非常に大事です。
例えば、1人の方がお休みになる可能性がある場合、そのお休みを阻止するためであれば、6,300円を使っても利益が出ると考えることができます。
私のデイサービスで、認知症のあるご利用者様がいらっしゃいまして家に迎えに行ったところ外出されていました。
1時間ほどで帰ってくることはそれまでの経験からわかっていたので、ドライバーには一度デイサービスまでご利用者様を降ろしに戻ってもらい、再度迎えに上がらせました。
ドライバーの業務時間は45分ほど増えてしまいましたが、それに掛かる人件費と売上の増加を比べたら再度迎えに行かせることが経営者としての最良の判断だということがわかります。
[…] 顧客単価を計算する記事でご説明しましたが、一人のドタキャン返しを成功させると私の3~5時間利用のデイサービスでも6,372円の収益が確保されます。 7~9時間ご利用のデイサービスであれば10,000円を超える売上を上げることができます。 […]
[…] 売上の出し方についてはこちらの顧客単価の出し方を参考にしながらご利用者様1人あたりの平均単価を算出して置きましょう。 ご利用者様の利用率の伸びに関しては現実的な数値を入れていかなければなりません。開業月からいきなり満員になることはありませんし、徐々に伸ばしていくような計画にしなければなりません。 また、キャッシュフローで考えた場合介護事業は介護保険から給付費が入ってくるのはサービス2ヶ月後の月末近辺になりますので注意してください。 […]