参入障壁とは、企業がある業界に新しく参入するために立ちはだかる難題のことであり、参入障壁が高いほど新規参入が難しいということになります。
参入障壁が低い場合、参入企業が増えることによって競争が激化し、新規製品開発競争や価格競争が生まれ、結果業界全体の利益率を下げてしまいます。
また、逆に参入障壁が高いと業界は独占や寡占状態になり、高収益を維持することが可能になります。
参入障壁は大きく下記の3つに分けられます。
目次
先行企業の優位性(規模の経済、ブランド確立、流通網、人材確保)
先行企業が新規参入を拒むために作っている優位性のことで、
新規参入しても競争に勝てないだろうと思わせることによって新規参入者を減らします。
規模の経済とは業界で大きく展開することにより、製品の仕入れ単価を安くしていたり、先行企業がブランドを確立している場合、新規参入企業がそれに勝てるブランドを確立するは大きなお金と時間が必要になります。
また、先行企業が流通網を張り巡らし、それを新規参入者に使わせないというようなこともあります。
製薬メーカーと卸売のような関係がこれに当たります。
人材確保に関しては特に介護業界では大きな障壁となっています。新規開業したものの職員が集まらないため定員を削減して営業している特養などよく見かけます。
デイサービスも看護師や機能訓練指導員が採用できずにオープン出来ない事例がよく見られます。
政治、法律
事業を開始するにあたって、免許・許認可・承認・届出などの法的な規制が加えられると業界やある資格者がいないと開業できない事業とか、自治体によって総量規制がある業界です。放送・金融・郵便・通信業界などがあげられます。
そもそも介護事業所は都道府県または市区町村から許可(指定)得ないと介護保険サービスを提供できません。
しかし、指定基準はさほど厳しくないので障壁と呼べるかは微妙なところです。
特養などの介護保険施設や地域密着型サービスなど自治体によって出店数が制限されています。
参入コストが高い
そもそも業界に参入するための初期コストが高いと参入者が減ります。
例えば、電力会社を起業したいと思っても、とてつもないお金が必要になるわけですから到底ムリだと諦めてしまうと行った具合です。
介護業界ですと、施設系サービスはかなりの投資になりますので、参入障壁がありますが、居宅系サービスはそれほど初期投資がかかるわけではありませんから、参入障壁が低いといえます。
デイサービスの参入障壁
介護事業、特にデイサービスにおいて参入障壁はとても低いです。
規模の経済も働きにくいですし、ブランドを築かなければならないわけでもありません。
現在介護事業は指定制(要件さえ見合えば必ず許可が降りる制度)ですので、
法律的な障壁も低いです。
開業にも最低300万円ほどあれば可能です。
その為、多くの企業が参入したことによってやや過当競争時代に入っていると言えます。
しかし、今後地域密着型通所介護の総量規制が行われるようになれば事情は異なってくるでしょう。
総量規制とは行政が企業の参入数を制限できるようになるということで、デイサービスは今後参入するのにコンペに勝ち抜くなどの条件が付される可能性があります。
参入障壁の作り方
先行企業にとって参入障壁を作ることは有効な戦略の一つです。
参入障壁を高くして将来の競争を減らすのです。
新規の航空会社が航空機の発着枠を独占していたり、チケットの購入カウンターを端の端しか渡さないなど業界をリードする大企業は必ず意識している戦略です。
私も微力ながら参入障壁を高める活動を行っています。
①開業に掛かる初期投資を引き上げる
小規模のデイサービスだと参入に掛かる初期投資は最低300万円からと格安です。
この常識を変え、最低1,500万円はかけないと選ばれる事業ではないと言われるような業界にしたいです。
現に私は初期投資を2,000万円かけて開業しています。
大きな投資をしなければ競争にならない業界にすることができれば、劣悪な業者の参入も防げますし、業界全体のイメージがよくなるでしょう。
②儲からない事業だと思わせる
これは裏技です。私は事あるごとにデイサービスは儲からないと吹聴しています。
まあ、謙遜でそう言っている部分もあるのですが、優秀な経営者が参入してほしくないという思いもあります。
ある宗教家に聞いた話ですが、新興宗教は人から忌み嫌われることが多いのですが、それは宗教家にとって悪い話ではないというのです。それは嫌われていれば新しく宗教団体を設立しようという人間が現れないからだというのです。
これも参入障壁と言えるかもしれません。