高齢者が日々の生活が困難になる原因の最も多い事例として、麻痺があります。
麻痺によって普段の生活を奪われ、家族に迷惑をかけながら暮らしているという高齢者を何人も見てきました。
そして裏を返せば、リハビリの要望としてあげられることが非常に多いということです。
しかし、一概に麻痺といっても様々な原因や種類があるため、通常の介護職員ではなかなかアドバイスやリハビリのお手伝いをすることができません。
今回はそんな麻痺について、介護職員が見てわかるように基本的なことをまとめてみたいと思います。
目次
麻痺とは
麻痺は『神経又は筋肉組織の損傷、疾病等により、筋肉の随意的な運動機能が低下又は消失した状況』と定義されています。
人間の運動は脳が命令を出してそれが神経を通って筋肉に伝わり、筋肉が骨や関節を引っ張ることによって運動は行われます。
その過程の一部に障害が生じることとによって思った通りの運動が行えない状態を麻痺といいます。
麻痺の原因による分類
麻痺の原因は様々ありますが、障害が発生した部位がどこにあるかによって下記のように分類することができます。
この分類は回復の可能性やスピードと相関関係を持っているので、リハビリ計画を作成するうえでとても重要な分類です。
中枢性麻痺
脳梗塞や脳出血などにより脳幹から上位において引き起こされる脳血管障害が原因の麻痺。
高齢者が恒久的なリハビリを必要とされるのはほとんどこの中枢性麻痺によるものが多い。
末梢性麻痺
運動神経の圧迫やウィルス性脳炎など、脳幹より下位の部位への障害によっておこる麻痺。
中枢性麻痺に比べると回復が早く予後かよいものが多い。
筋疾患
パーキンソン病や筋萎縮性側索硬化症(ALS)などにより、筋肉を動かす過程に障害が発生している状態。
病気の種類によって差はあれども、進行が早くリハビリが不可能な場合もある。
麻痺の部位による分類
麻痺が体のどの部位に表れているかでも分類することが可能です。
その部位によって疾患の部位を予測することも可能です。
単麻痺
四肢のうち一肢のみに起こる麻痺の状態。
片麻痺
脳卒中などが原因となり右半身又は左半身が動かせなくなる状態。
対麻痺
両下肢に引き起こされる麻痺。脊髄や大脳中心前回正中の占拠性病変などで起こる。
四肢麻痺
上下左右、すべての四肢に麻痺のある状態。下肢の麻痺がより強い状態を両麻痺という。
交代制麻痺
右側の脳神経麻痺と左上下肢麻痺のように脳神経の麻痺と対側で現れる上下肢麻痺を言う。脳幹の障害によることが多く。
皮質や皮質下の障害の場合、同側の麻痺となる。
交叉性麻痺
右上肢と左下肢、左上肢と右下肢のように上下で対側に麻痺が出る状態。延髄下部の錐体交叉部の障害によって引き起こされることが多い。
麻痺の程度
麻痺には同一の原因から起こるものであっても程度の差があります。また、麻痺の程度はその日の状態や疾患の進行具合、リハビリの効果によっても変化します。
リハビリの経過観察を行う場合の重要な指標となるため、改めて評価の仕方と共に記事にします。
麻痺の強度
麻痺の強さ、つまり自身でどこまで運動を行うことができるかの指標
- 不全麻痺:運動を行おうとしてもうまく力が入らなかったり、感覚が鈍くなる状態
- 完全麻痺:まったく動かすことができない状態
- 振戦:手足を動かそうとしても震えが起きる状態。特に安静時に震えがひどくなることを静止時振戦といいます。
- 痙縮:筋肉が過緊張した状態。指が伸ばせない。手首が伸びない、ひじが伸ばせないなどの症状があります。脳血管障害の片麻痺時に起こりやすい。
麻痺部の可動域
脳血管障害は筋肉の動きに制限をあた得ることがあります。
関節を中心にどの範囲まで体を動かすことができるかもリハビリ計画には重要となります。
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