脳血管障害(脳梗塞や脳出血)が麻痺や失語症の原因となり、多くの高齢者がリハビリに苦労しているということはご存知だと思います。
前回の記事で脳梗塞や脳出血がどのような原因で発症し、どのように脳にダメージを与えているかを説明しました。
それはそれぞれの疾患や発症部位によって処置方法はそれぞれに違った方法が必要とされるということを意味しています。
また、脳血管障害で倒れた場合、処置に要する時間が短ければ短いほど死亡率は低下し、後遺症も発症しにくいということも良く知られています。
脳血管障害はその原因や発症部位をいち早く特定して治療計画を立てることがとても重要になります。
脳血管障害が疑われる患者が運び込まれた場合、診断に使われるのがCTやMRIなどの脳画像です。
CTやMRIは受けたことがある方もいらっしゃるかもしれませんが、実際どのような仕組みを使って脳の中身を画像化しているかご存知でしょうか。
また、どのような写り方をした場合にどのような症状が疑われるのか知っている方は少ないと思います。
さて今回は、そんな脳画像分析の初歩についてお話していきたいと思います。
脳画像の検査機器
CT(computed tomography)
エックス線を照射する丸い筒の中に頭を入れて、頭を通過したエックス線の量を計算することで頭の中を輪切りにした画像を投影します。
骨や出血(カルシウムやタンパク質)はエックス線を吸収しやすいので白く投影されます。また、水や空気はエックス線を吸収しないので黒く投影されます。
CTは出血を白く映すため、脳出血やくも膜下出血などの診断に威力を発揮します。一方脳梗塞の様に血管が詰まるだけでは顕在化しないため発症直後の脳梗塞の診断には向いていません。
※脳組織が壊死するまで進行した場合黒く見えるようになります。
CTのメリットは検査時間が5分ほどと短時間で結果を見ることができることです。
一方エックス線を照射しますので当然被ばくすることになるのがデメリットです。
MRI
人間を構成している分子は強い磁力をあてることによって、並び方に微妙な変化を起こします。
その変化は骨や水や脳などによってそれぞれ違っています。MRIはその違いを利用して計算、画像化することによって単層写真を作ります。
MRIはCTと違って検査条件を変えることによって様々な画像を作ることが可能です。
CTと同様に水を黒く、脳を灰色に見せるT1強調画像、これを白黒逆転させたT2強調画像、脳梗塞の病巣がはっきり写るようにしたフレアー画像などです。
また、近年では急性期の脳梗塞の場合には拡散強調画像(DWI)が使用されます。
MRA
MRIは脳の断面画像を取得するものですが、MRAは脳血管を立体的に抽出する検査です。
エックス線や造影剤を使用することなく血管画像を取得できるので安全性に優れています。
下記画像の様に白く太い血管は血流が多く、細く薄い血管は血流が弱くなります。
血液が漏れていたりすると白くにじんで見えます。
くも膜下出血の原因となる脳動脈瘤や急性の脳梗塞の発見に適しています。
診断の手順
脳血管障害を起こして救急で運び込まれた場合、意識レベルの確認、血圧や脈拍などの基本的なバイタルサインの確認を行った後は必ずといっていいほどCT検査が行われます。
CTはその検査時間が5分ほどと短く、脳出血やくも膜下出血などの診断に有効とされているからです。
その反面、発症直後の脳梗塞や小さな脳梗塞などの診断には難しい場合がありますので、必要があればMRI検査を行います。
MRIは初期の脳梗塞でも発見することが可能ですが、検査自体に40分以上かかってしまうことや磁気を使うのでペースメーカ―などの金属類を体に埋め込んでいる方には使用できません。
脳梗塞の細かい血管の状況を調べる必要がある場合MRA検査も追加で行われます。
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